3月開始のはずが…… 空白の4カ月
昨年度から筑波大学新聞で報道され、注目が集まっていた筑波大学生部と全代会との協議。しかしその進捗は全代会公式HP以外ではほとんど告知がなく、その内実はヴェールに包まれていた。この度、内部文書の提供によって協議の進展に関する新情報が本紙にもたらされた。
3月26日時点で、全代会は大学との協議を次の通り実施したと告知していた。全体的な方針に関する意見交換:1月6日・3月2日・3月24日、▼実務レベルでの協議:1月28日。また教職員と学生から構成される学生生活支援室と議長団との会議を、週に一度のペースで行っているとしている(全代会公式HPより)。

これら寄宿料に関する協議は、筑波大学新聞が391号(2月18日発行)で報じており、3月には協議が開始されるとのことだった。しかし公式HPで報告された日のどの資料にも寄宿料協議に関して記述が見当たらないことが、関係者への取材で明らかになった。資料の一部には、寄宿料が項目立てられているだけで白紙のものもある。全代会は協議に必要な枠組みの整備に時間を費やしているようだ。
内部資料「値上げは飲み込む」 主眼は価値向上に
全代会の議論の状況を、全代会に参加していない学生が知る機会は皆無に等しい。しかし入居学生を無視する議長団の方針に反発する構成員も少なからず存在するようだ。今回本紙に内部資料を提供したBさんもその1人だ。提供資料は6月から7月にかけての議事録。全代会構成員なら誰でも確認できるという。
7月9日の学長懇談会に向けて6月に行なわれた会議で、常任委員会のひとつの生活環境委員会(以下、生環)は、懇談会での方針として、寄宿料値上げは「合意」、宿舎の価値向上に主眼を置くことを提起した。議長団は懇談会で学長から有意義な発言を引き出すことを重視しており、生環が示す宿舎の価値向上が大学との合致点と見なしている。6月2日の全体対話に関しては、学生部から発言者として全代会構成員の出席が打診されていたことについて「もし断らなかったら全代会は学生部の犬だと思われかねなかった」と振り返る場面もあった。
値上げ合意に関しては「なにもいわない」「賛成も反対もない」と、合意形成への関与を重視してその内実を不問とすることで出席者の意見集約が行われた。かねてより指摘されていた借地借家法の適用についても、懇談会では宿舎が行政財産とする大学の主張に沿って議論を進める方向に決したようだ。全代会はコミュニティ創設を通じて価値向上に寄与していく方針に固まりつつある。
今年4月に罷免された構成員は生環に所属していた。入居学生に値上げの納得度を調査すべきとの意見を示していたが、罷免以降実施の兆しは皆無だ。圧倒的な大学優位の状況を前に、議長団や生環幹部は敢えて全学の意向を調査しないことで、大学側の意向に柔軟に対応できるようにしているといえよう。寄宿料に関する大学との協議が進んでいないのも、宿舎が住居なのか大学施設なのかという、大前提のすり合わせに失敗しているからだと言えそうだ。
資料を提供したBさんは、罷免されたくはないがと冗談めかして笑いつつ「価値向上は大学が説明会で示した値上げ根拠のひとつ。コミュニティの刷新は値上げに関係なく進めればいい。なのに値上げを認めるのは大学の機嫌を損ねたくないからでは」と、議長団の思惑を推測する。
エアコン設置の前倒しも黙認 無責任な発信に当事者団体猛反発
宿舎経営により生じる年間4億円の赤字のうち1億4千万円を占めるエアコン設置(→6月号参照)に関しても、全代会は大学への追従姿勢を見せている。
6月24日、全代会は「エアコン未設置の宿舎に住む方へのお知らせ」と題して公式SNSを更新、「学生生活課に学生の声としてエアコン設置を要望した結果(中略)有料でエアコン設置をが進むことになりました!」と、新学期以降供給が滞っていたエアコンの設置が開始されると告知していた。一方で、費用が値上げの根拠のひとつであるエアコン設置経費に等しいため、疑念の声も広がる。
こうした事態に反発を強めるのは入居学生たちだ。6月24日、現行の寄宿料の高さに疑問を持つ学生有志によって今年4月に結成され、他大と同水準の寄宿料設定を目指す当事者団体「筑波大宿舎値下げ運動推進本部」は、公式SNS上で「値上げに伴うエアコン設置を前倒ししただけ」と反論、全代会の発信を「ナンセンス」と糾弾した。2日後には「撤回を求める会」もこれに同調、当該発信を「悪質行為」と批難している。
大学の案内が翻ったため従来より高額での契約をせざるを得なかった学生もいる。筑波大はエアコンに関して「学生への補償は考えていない」と回答している。大学は取り合わない学生の不利益を、全代会も顧みないようだ。(一の矢兵太郎)
(この記事は、2026年7月23日に公開したものを改めたものです)