筑波大は23日、次期学長予定者に現職・永田恭介氏を決定した。この再任で永田氏の任期は通17年に及ぶ見込み。今回の学長選では、学長選考・監察会議に推薦されたのは永田氏1人であったこと、意見聴取で922票の白票(有効票の約4割)があったことがわかっている。
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また、同時期に総長選考を行っている東京大学では、2回行われた意向投票でどちらも1位が2位の倍以上の得票をし、2回目は1位が過半数を得票したにもかかわらず、2位の藤垣裕子氏が次期総長に選ばれた。文科省はこれを「特異な例」と強調し、極めて異例となる文書での選考経緯検証要請に踏み切った──国立大学の学長選考がかつてないほど混乱し、議論を呼んでいる。そもそもこの混乱の根はどこにあるのだろうか。本紙では数回にわたって国立大の学長選考と、筑波大特有の問題について検証していく。
筑波大や東大だけが問題ではない? 背景には2004年の国立大学法人化
現在インターネットで話題になっているのは、もっぱら東大の総長選考と同時期に超長期体制が決定した筑波大であろう。しかし、意向投票結果が覆されるなどの問題は、これまでにいくつもの国立大で相次いでいる。背景にあるのは2004年の国立大法人化である。したがって今回の東大や筑波大の問題は、全国の国立大学に共通する構造的な問題だ。
かつての国立大の学長選考は、教職員の投票に基づいて、評議会が指名、その後文部(科学)大臣が形式的に任命するというシンプルな手続きを取っていた。評議会は各教育組織の長や教授会が選んだ教員によって構成された、国立大の最高意思決定機関だった(図1=法人化前の国立大学の組織・運営体制も参照)。
「学内のことは学内で決める」大学自治の崩壊、合議体新設による学長権限の強化
学内のことは学内で決める──大学自治のこの鉄則は、2004年の国立大法人化で崩壊した。教職員は非公務員となり教育公務員特例法は適用外となった。それだけではない。大学運営の仕組みも大きく変化した。
まず、経営者などの過半数の学外委員と、学長、学長指名の理事・職員からなる合議体「経営協議会」が新設された。教員からなる評議会は、「教育研究評議会」と名前を変え経営協議会と同等レベルに権限が縮小。この2つの会議を経た最終意思決定機関として「役員会」も新設された。役員会は学長と学長指名の理事からなり、学外者も入る。
そして「学長選考会議」もこのとき新設。ここには教育研究評議会の学内委員と経営協議会の学外委員の同数が参加することになった。ところで、経営協議会の学外委員は最終的に学長が任命する。教育学者の駒込武は「学長の選出した委員が次の学長を選出(再任)する不思議な仕組み」(『統治される大学』地平社、2024年、25頁)だと述べている。ほかにも「運営方針会議」という合議体が近年新しく出現しているのだが、これについてはまた別の機会に解説しよう。
いくつもの合議体には「学外委員」「学長指名」が多く目につく(図2=法人化後の国立大学法人の組織・運営体制も参照)。そして、意思決定の影響をもろに受ける現場の学生と教職員の影は、限りなく薄くなっている──国立大法人化が招いたのは、大学自治の崩壊と学長権限の強化であった。このシステムでは、一度学長という権力が暴走すると歯止めが難しく、そのシステム自体を学長権限強化──現場からますます離れた意思決定に向けて作り変えてしまうこともある。東大や筑波大も、まさしくその例だろう。
【②につづく】(2026年10月号掲載)